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女王様の電話番/渡辺優

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あらすじ

人間関係のトラブルで勤めていた会社をやめてしまった志川は、女王様がマッサージを施してくれるお店「ファムファタル」の電話番として働き始めることになった。
その中で、〝美織〟という名前の一人の女王様と仲良くなり、夕飯の約束をした当日……彼女は失踪した。
たった一度、自分のことを抱きしめてくれた、ローズの香りをまとった美織を、志川は探し始める。
美織が担当したお客や、美織が残した手帳を足がかりに進む美織探しの旅は、志川が抱えるひとつの問題……というより、課題の答えを掴むための旅でもあった。
果たして、美織は善い女王様か悪い女王様か?聖女か魔女か?

 

🌹🌹🌹

 

この本は、図書館で予約していて、随分時間が経ってから手元にやってきた。あらすじを読まずにページをめくり、冒頭の文に驚いた。
〝この世界はスーパーセックスワールドだ〟

タイトルだけを見て、ぼんやりと、異国の女王様の電話番がトラブルに巻き込まれたり、事件を解決したりする本だと思っていた私は、思わずパタンと本を閉じた。

しかし、読み進めてみるとこの本からはそんな性的な匂いは一切しなかった。それはなぜか。
志川は、自分の中にある、愛が性欲に繋がらない〝アセクシャル〟というセクシュアリティに悩んでいたからだ。

LGBTQ+という言葉が世に出て久しい。しかし、まだまだ知られていないセクシュアリティはある。
志川は人が好きだ。人を好きになり、仲良く過ごしていた先で、男女のお付き合いや、それに伴うセックスに行き当たり、関係を駄目にしてしまう。
学生の頃のニコイチのような、誰よりも優先される一人になってみたい。そんな気持ちがあるのに、愛の先にはセックスがある。志川にとって、愛にセックスは含まれない。だからできないのだ。

そんな志川に、会社でのトラブルについて知っている元同僚の吉野は放つ。「なんであんな思わせぶりなことしたの?」と。
彼女の常識に則った言葉は、志川の生き方を狭めてしまった。志川はそんなに悪いことをしただろうか?勝手に、目の前の女には自分と同じように性欲があると思ったのは、相手なのに。

自分に何も求めず、ただ温もりを感じさせてくれた美織。
志川が美織を、ヒナが親を求めるように探す様子は、少し痛々しくもある。けれど、その切実な旅を見届けずには居られなかった。

自分の余暇をすべてささげて読み切ってしまった。一ページ目を開いた瞬間の期待以上に面白い本だった。