ひつじと四重奏

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ツバメ号とアマゾン号ーランサム・サーガ:岩波少年文庫

大人になってから、一体何度こんなに胸躍る体験ができるだろう。

目の前に広がる世界をただただ全力で活かし、楽しみ尽くす。なんともパワフルな六人の子供たちを追いかけて26歳の私も素晴らしい夏休みを過ごした。


主人公は夏休みを大きな湖のそばにある農家で過ごしていたウォーカー家の子供たち、ジョン、スーザン、ティティ、ロジャの四人。

船乗りのお父さんから帆船〝ツバメ号〟の使用許可をもらうと、それぞれが船長、航海士、AB船員、ボーイの役割を担い、船員雇用契約書に署名をして、冒険に繰り出した。


大砲を積んだ船長フリントの海賊船を見つけたり、アマゾン海賊のナンシイ・ブランケット、ペギイ・ブランケットと船取り戦争をしたり、先住民に出会ったり……

四人が経験している夏の出来事が、船の腹に当たる波の音まで聞こえそうなほど近くに感じる、素晴らしい本だった。


四人と農家に滞在していて、冒険に送り出したお母さんもまた素晴らしい。

彼らは冒険の間、本土の大人たちを〝先住民〟と呼びいかなる時も探検家であり続けたが、このお母さんは場合によっては〝女王さま〟でありロビンソン・クルーソーの〝フライデイ〟だった。そして〝お母さん〟の時もあった。


近くで暮らす農家のディクソン夫妻の元へ毎朝牛乳を取りに行かせることで子供たちの安否を知り、また周囲の大人と一悶着あった時にはすぐそばへ駆けつけて助け舟をだす。

子供たちの好奇心を摘まず、気に掛けていることを悟られない距離から見守っている。

なんて頭のいい聡明な母親なんだろうと思った。


年長のジョンが、牛乳を取りに行くように言ったお母さんの真意に気付いているのも彼がわかる年齢であることがちゃんと描かれていてすごい。


少し前に、森見登美彦氏の『熱帯』を読んだ。

これにも孤島が出てきて、『ロビンソン・クルーソー』の要素が織り込まれていたので、そのうちロビンソン・クルーソーも入手して読みたいと思う。

しかしまずは、ツバメ号とアマゾン号のシリーズを読破したい。

名残惜しそうに、振り返り振り返り冒険の幕を下ろした子供たちと同じように、私もまた彼らとの冒険が恋しくて仕方がない。