結婚挨拶の時、母は私と旅行がしたいと言っていた。
確かに、母と妹は何度か二人で旅行をしているけど、私と母は二人ではないかもしれない。
それは何か格差とかでは決してなくて、家族旅行ではもちろん妹がいるし、成人してからの旅行は仕事の都合で私だけ行かなかったりということが続いたからだ。
もともとは福井県を予定していたものの、地震が起こって候補地として挙がっていた三重県伊勢市〜鳥羽のあたりに予定を変更した。
一日目、母に家の前まで車で来てもらった。旅支度はリュック、サブに母からもらった赤いショルダーバッグ。
地震が怖かったので、なんとなくで作っていた防災リュックも持参して母には予め水を二リットル買っておいてもらった。
出発してすぐ、ストローで飲むような紅茶を渡された。
乗せてもらうのに確かに飲み物とか何も用意しなかったな、と気付いて今後に活かそうと思った。
後部座席にはたくさんのお菓子が詰め込まれた保冷バッグが用意されていた。
私が好きなリンツのチョコレートに、じゃがりこ、そして他にもいろいろ。
レンタルしてきてくれた米津玄師のアルバムをBGMに、私たちは三重へと出発した。
途中サービスエリアで飲み物を買い、私は指輪を拾った(帰宅してから捨てた)。
車内でいろいろなことを話したり、Yahoo!の地図アプリが見当違いな方角に進もうとするので、信じられず道路標識を注視しながら無事鳥羽市に到着した。
ドアを開けた途端、私たちは大阪の街から海の町にワープ移動したかのような気持ちを味わった。濃い潮の匂いがして胸が高鳴った。
雨の予報だった鳥羽市は、目が覚めるような快晴に恵まれた。
海も穏やかでキラキラしていて綺麗だった。
一つ目の目的地、ミキモト真珠島に着いて、整えられた日本庭園を歩いた。
海にせり出た島の上にあるので、海辺の町に来たという感じがしてテンションが上がる。
母がこんな晴天の日に日焼け止めを塗り忘れてきたと言うので慌てた。
私は冬も日焼け止めを欠かさないのでマジかと思いながら、海女さんの実演の時間を確認後すぐ建物へ入った。
建物内ではミキモトの真珠ジュエリーや手頃なお土産がガラスケースに並んでいた。
お土産をデザインより値段をちょっと重視で確認していく。
可愛いネックレスがお手頃価格だな、可愛いピアスはちょっと高い。そしてこっちのエリアはすごく高い……!そんな目と目のやり取りをしていたら時間が近づいてきたので、海女スタンドと呼ばれる実演を見られる場所へ出た。
船に乗って三人の海女さんが現れた。
放送で個性豊かな紹介を受け、手を振ったりお辞儀をしたりとやりとりを楽しんだ。
海女さんはクラゲが浮いている海に果敢に飛び込んでは、獲物をとったどー!と見せてくれる。思っていたより、若い人もいて驚いた。
浮かんできてすぐ呼吸をすると肺にダメージを受けるため、獲った獲物を入れる桶に顔を突っ込んで息を整える、という豆知識を得た。
海人さんの仕事を見たあと、お土産屋さんの二階にある食事処で真珠定食を食べた。
あこや貝の貝柱が使われた定食で、貝は苦手なのだがせっかくだからと食べてみた。
貝柱を使用した付け合わせが三つと、ウズラの卵、炊き込みご飯、そして伊勢うどんのセットだった。
付け合わせの一つ、貝柱のフライが美味しくて、もっとあっても食べられたかもしれない。
母はウニと和えた料理が好きだったらしい。私は貝が苦手なので、火が通っている方がいいなぁと話しながらもぐもぐ。
田舎が香川県で讃岐うどんに慣れ親しんでいるため、少し緊張しながら食べた伊勢うどんもすごく美味しかった。
出汁の色は濃いけど全然辛くない。麺はマカロニみたいな食感で、また食べたいものリストに追加だな、あれは。
可愛いネックレスは母が妹と三人でおそろいのお土産として買ってくれた。とても可愛いから嬉しい。
ピアスは諦めたんだけど、真珠島を出たところのお土産屋さんでデザインが似ているものが半額くらいで売っていて買った。
母は真珠島で私が諦めたピアスを買っていたのでこちらもお揃いじゃないけどお揃いみたいになった。安いものを自慢する習性がある大阪の人間として、母は少し悔しそうだった。
真珠の作りがわかる博物館のような建物に入ったものの、順序を間違えて二人仲良く逆走した。
イミテーションパールは玉通しをこすり合わせるとツルツルしていて、本物の真珠はザラザラしているということを学んだ。
真珠って貝にとってどういう存在なのかな、人間で言う胆石とかだったらなんか嫌だな。
伊勢シーパラダイス編へ続く。